充電できなくなった古い電動工具のバッテリーパックをNi-CdからLi-ion化改造するということで、前回の記事で紹介したポータブルスポット溶接機を使って組電池を作ってみることにしました。
古い電動工具のバッテリー問題
このブログでは以前、マキタのドリルドライバー(6095D)、インパクトドライバー(6093VD)、コードレスクリーナー(4093D)のレストア記事を書いてきました。対応する手持ちのバッテリーパックは当時物のニッカド電池ですでに充電不可、使用するには高い純正品か互換品を購入する必要があります。
しかし本体はどれも数百円で購入した元ジャンク品だし、安い互換バッテリーであっても数千円という価格は購入をためらってしまいます。(まだまだ使える古い電動工具の中古価格の安さの理由か)
使えないバッテリーパックの中の電池を交換してリフレッシュするというのは最初に考えたことですが、交換用の新品Sub-Cバッテリーも必要数を揃えるとなると互換バッテリーパックの価格と大差なし。
ちょうど手元にはジャンクノートPCのバッテリーパックから取り出した生セルがたくさんあるので、1本あたり4.2Vの18650リチウムイオン電池を3本直列にして12.6Vの組電池を作ってみるのもいいだろうということになりました。
信頼性を考えたら交換用バッテリーの購入以前に、工具本体ごと新品に換えてしまうのが確実なんですが、そこはDIYブログ。
「元を取る」なんて考えず「知的好奇心を満たす」ことを優先に、改造バッテリーの作成を実行することにしました。
Ni-CdからLi-ion化改造
今回は以前レストアした三機種のバッテリーを作成するということで、9.6Vの純正ニッカドバッテリーパックのケースを利用して中身をリチウムイオンバッテリーへ交換、12.6Vに改造することにしました。
組電池を作る手順は、
- 純正バッテリーパックを分解してケースと接点を用意
- 18650電池3本を直列になるようにニッケルストリップで溶接
- 組電池にBMSを半田付け
- 13φの塩ビ管を使って接点部分のスペーサー作成しケーブルでBMSと半田付け接続
- ケースに収納して完成
という流れ。
マキタ「バッテリ9100」の改造
ということで、まずはインパクトドライバー6093VDの「バッテリ9100」の加工から始めます。
準備
最初に充電・使用不能になったバッテリ9100のケースを分解。中に入っているニッカド電池を取り出し、流用する接点部分のパーツとケースを確保。18650リチウムイオン電池3本をどのように収めるか考えます。
分解した下側ケースに18650電池が3本入るスペースがあるのでここに収納、上部突起部分の中には適当な塩ビ管をスペーサとして接点パーツを固定することにしましょう。
絶縁シールを貼った18650電池を重ねてグルーガンで固定、直列で接続できるようニッケルストリップを切り出しておきます。
スポット溶接
グルーガンで固定した18650電池をスポット溶接機を使ってニッケルストリップを溶接。
直列になるよう、取り付け位置を間違えないよう慎重に作業します。
BMSを取り付け
3S/20AのBMS(バッテリー マネジメント システム)基板を18650電池に両面テープで貼り付け、0V、4.2V、8.4V、12.6Vの接点に対応する組電池の各所にケーブルを半田付け。
正しく接続できているか?テスターで電圧を確認しておきます。
ちなみにこのBMSの場合プラス側から順に、「12.6V」は全体のプラスへ、「8.4V」は1本目と2本目の接続部へ、「4.2V」は2本目と3本目の接続部へ、「0V」は組電池全体のマイナスへ接続しました。
最後に充電・出力に接続する(+)と(ー)にテスターを当てて12V程度の電圧が出ているか確認しておきます。
接点部分の加工
ケース上側の突起部分内部に収まる接点部分(工具本体および充電器との接続する部分)のスペーサーはこんな感じ。
直径13mmの塩ビ管を現物あわせで2本切り出しグルーガンで固定、プラス・マイナスの接点に適当な電源ケーブルを半田付けしてそれぞれの塩ビ管の中を通しておきます。
接点スペーサーから出てきた電源ケーブルをBMSの出力・充電部分に半田付け、各接点にはグルーガンで絶縁処理みたいなことをしておきました。
組電池をケースに収納
接点部分の塩ビ管スペーサーを上側ケースにはめてから18650組電池を押し込んでみると、下側ケースにすこし隙間ができます。
ケース内部で電池が動かないよう適当なサイズで折りたたんだボール紙をスペーサーとしておきました。
上部接点の電圧をテスターで確認して問題なければ上下ケースをボンドで接着固定し完成。
マキタ「バッテリ9000」の改造
続いてドリルドライバー6095Dとコードレスクリーナー4093Dで使用する「バッテリ9000」の加工をしていきます。
詳細は省きますが手順は同じ。
こちらはストレート形状なので写真のような配置でスペーサーも内部のサイズを測って現物あわせでこんな感じにしてみました。
各所を確認しケースに収納する前に100均で売ってた「鋼管ポール用物干しさおカバー」で全体をカバー。
純正バッテリーパックのケースに収納して完成です。
ちなみにこの「物干しさおカバー」ですが、18650電池を2本並べた状態でちょうどいいサイズでコスパや入手性が良いですね。
もっと大きいサイズの場合、大手動画サイトの海外の動画をみると2ℓのペットボトルを輪切りにしてヒートガンでパッキングしてるケースもみられますね。
Ni-CdからLi-ion改造バッテリーの動作確認
ということで純正9.6Vニッカドバッテリーを12.6Vリチウムイオン電池に改造したバッテリーパックの動作確認をしてみます。
まずはNi-CdからLi-ionに交換したバッテリーパックの外観から、って言っても見た目は変化なしです(笑)
しかし手にとってみると純正バッテリーとは明らかに重さが違います。
マキタインパクトドライバー6093VDにリチウムイオン化したバッテリ9100を取り付け。
トリガーを引けば問題なくモーターが回転し、電圧が上がったせいか?トルクも増した感じ。
もっとも新品状態をしらないので変化があったのか判断のしようも無いんですが。
続いてマキタ電池ドライバードリル6095Dとコードレスクリーナー4093Dの動作確認。
どちらも問題なく動作しましたが、コードレスクリーナーの方はレストア時に確認したニッカドバッテリーよりパワフルに吸引している感じがします。
(後日洗車した時に車内の掃除で使ってみましたが細かい石などしっかり吸い取ってくれました!)
ということで無事に復活したマキタの電動工具たち。古い工具ですがDIYであればまだまだ活躍してくれそうですよ。
今回の改造ではバッテリーをニカドから18650リチウムイオン電池に交換したことでまた使えるようになった事はもちろんのこと、同時にバッテリーパックの軽量化というメリットもありました。
たくさんの持て余していた18650リチウムイオン電池を活用するために購入したポータブルスポット溶接機が役に立ってくれて本当に良かったです。
未改造バッテリーとの重さの比較
ところで前段で「軽量化」について触れましたが、実際のところどれくらいの差があるのでしょう。
幸いなことに(?)未改造のジャンクバッテリー「9002」と「9100」がそれぞれあるので、改造したバッテリーとの重量差を計測してみました。
その結果は、
- バッテリ9002(未改造ニッカド):497g
- バッテリ9000(リチウムイオン化):216g
- バッテリ9100(未改造ニッカド):475g
- バッテリ9100(リチウムイオン化):220g
でした。
多少の誤差はあるでしょうが、概ね半分以下の重量となりましたね。
これ、バッテリーパック装着時の重さの感覚があきらかに違って、Ni-CdからLi-ion電池に交換改造したことで使用時の取り回しも軽くなり作業時の腕の負担も減りそうでいいですね。
せっかく使えるようになった工具ですからいろんなシーンで使っていこうと思います。
比較した未改造のバッテリーも折を見てリチウムイオン化改造してみましょうかね。
次回はNi-CdからLi-ion化改造したバッテリーパックの充電機器について書いてみようと思います。
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