スポット溶接機を買ってみた、ということなんですが、これを使って18650リチウムイオンバッテリーの組電池を作ってみようと思います。
以前充電不可になったノートPCのバッテリーパックを分解した際に内蔵されていた18650リチウムイオン電池を取り出したことがありました。
組電池では使用できなくなったノートPCのバッテリーパックですが、分解した単体の生セルでは専用の充電器で充電できるものもあったので、これを充電式の電動工具のニッカドバッテリーの置き換えに使えないか?と考えていました。
もちろんただ接続しただけでは出力や充電の管理ができずせっかく作ったバッテリーパックを早々にダメにしてしまうのは容易に想像できます。
なのでBMS(バッテリーマネジメントシステム)基板を介して使えるよう、その組み立て作業を安全かつ容易にするため「スポット溶接機」を使用するのが必要と判断しました。
ちょうど大手通販サイトでスポット溶接機を検索していたところ、都合よくタイムセールでバッテリー内蔵で必要なものがほぼ揃っている商品が割引価格で安価に販売されているのを発見。
送料込みで6,000円以下ということで、これなら試してみてもいいかな?ということで購入してみました。
「スポット溶接機」の箱の中身
ということで届いたスポット溶接機の外箱はこんな感じ。
メーカー名は「Kerpu」で箱の蓋には、
- 「PORTABLE SPOT WELDER」
(ポータブルスポット溶接機) - 「For Beginners, Engineers DIY Electronics Enthusiasts, Etc」
(初心者、エンジニア、DIYエレクトロニクス愛好家等向け)
と書いてあります。
箱の大きさは横23cm縦16cm高さ4cmくらい。重さは637gでした。
箱を開けると中身はこんな感じ。
スポット溶接に必要な部品とそのほか18650バッテリーの電池ホルダー(4本用)と厚さ0.1mmくらいのニッケルメッキストリップが付属。
箱から取り出した構成部品はこんな感じ。
- スポット溶接機本体(バッテリー内蔵)
- 溶接ペン(2本)
- USB-C充電ケーブル
- ニッケルメッキストリップ(2m)
- 18650電池ホルダー(4本x4個)
- 棒ヤスリ
- 取扱説明書
これだけでスポット溶接が可能な内容ですが、スポット溶接機の内蔵バッテリーを充電するための充電器、5V2A程度のUSB充電器を別途用意する必要があります。
なお本体のサイズは11.3cm x 8.3cm x 2.8cm、重さは333g。
溶接ペンの全長は39cm、USBケーブルの長さは100cmでした。
棒ヤスリは何に使うんでしょう?
機能と動作の確認
購入したスポット溶接機の構成パーツを確認ができたので取扱説明書を見ながら機能と動作の確認をしてみます。
まずは本体上部の操作パネルから。
- 左にある「ON/OFF」ボタンは電源スイッチで2秒間の長押しで動作
- 電源投入後「ON/OFF」スイッチを押す事で溶接の出力を1〜11段で変化させられる
- 青いランプの「Power indicator light」は内蔵バッテリの残容量を示し25%刻みの表示
- 赤いランプの「Gear indicator light」はランプの点灯数で出力の大小を示し左の1点灯が最小で全点灯で6、7は右の一つが点灯で右側5つが点灯したら最大の11(左から右へ行って左に戻る)
- 「P- P+」と書かれた金色の端子は溶接ペンの接続端子
- 「USB」の下の「5V/2.4A」はUSB出力
- その下の「INPUT」は充電端子で付属のUSB-Cケーブルで本体内蔵のバッテリーを充電する(充電器は5V/2.1A以上のものを使用する)
ちなみに外部出力のUSB端子にケーブルを繋いで手持ちのスマートフォンを接続してみたら、スポット溶接機本体の電源を入れなくてもスマホの充電が開始されました。
機能と使用方法を概ね理解したところでスポット溶接機の内蔵バッテリーを充電してみます。
ほぼ満充電の状態でしたが、付属のUSB-Cケーブルを5V/2.1Aの充電器と本体のINPUT端子に接続すると青いパワーインジケーターランプが点滅し、その後四つあるランプの全てが点灯状態になって満充電となりました。
内蔵バッテリーが満充電になったら溶接ペンを本体の接続端子に差し込み準備は完了。
本体サイズはコンパクトですが接続した溶接ペンの長さが38cmくらいということでちょっと取り回しが悪い感じですね。
実際にスポット溶接してみた
内蔵バッテリーが満充電になったので動作確認も兼ねて溶接のテストをしてみます。
溶接出力のレベルを最小から最大まで試しそれぞれの状態を確認すべきところですが、なんとなく「5」からスタート。
試しに0.1mmのニッケルストリップを充電不能になった18650電池に溶接してみたところ、ちょっと引っ張っただけでは外れないくらいに接続できました。
多分ですが、出力が弱ければタブをちょっと引っ張っただけで外れ、高出力になるとタブが溶けてやはり溶接が不完全になるという感じなのでしょう。
(タブの厚みや面積に応じて出力を切り替えて使うのが正解なのかな)
テストが上手く行ったので試しに充電可能な18650バッテリー二本を使って直列8.4Vの組電池を作ってみようと思います。
まずはジャンクノートPCのバッテリーパックから取り出した18650リチウムイオンバッテリーの生セルを二本用意。
タブで溶接接続された組電池を分解する時にそのタブをペンチなどでひっぺがして電池単体の状態にしておきましたが、プラスマイナス側それぞれに溶接されたタブの破片が残っているので付属の棒ヤスリでそれを削り落とします。
なるほど、このために棒ヤスリが付属しているんですね。至れり尽くせりという感じで好感が持てます。
ちなみに溶接の手順は、ポータブルスポット溶接機の電源を入れ、出力を設定し、接続した溶接ペンの片方をニッケルタブに押し付けつつ、適当な間隔でもう一方の溶接ペンの先を押し当てるとバチッ!と火花が出て溶接完了、という感じ。
人によってはバチッ!と火花が飛ぶのが怖く感じるでしょうが操作としては簡単そのものでした。
直列で接続するためそれぞれ一方のプラスとマイナスをニッケルストリップで溶接接続。反対側は組電池のプラスマイナス端子になるためそれぞれに短いニッケルストリップを溶接。
この組電池には写真にある2S/20AのBMSを接続して充電・出力の管理をさせるため、各電池のプラスマイナス端子を接続した4.2Vのタブに短いストリップを追加で溶接、各タブを基板に半田付けして完成としました。
ということでテストも兼ねたBMSを組み込んだ8.4Vの18650リチウムイオンバッテリーの組電池が完成。
適切な出力を設定して使用すれば簡単にスポット溶接できることがわかりました。
ポータブルスポット溶接機を使ってみて
大手通販サイトで「スポット溶接機」を検索してみると、制御基板と溶接ペン・バッテリー接続ケーブルのみで、バッテリーは自分で用意するタイプの安価なものもリストに出てきます。
実は以前このタイプの二千円以下のものを購入して試してみたんですが数回使って使用不能となりました。
溶接機の電源には交換して不要になった軽自動車用の40B19Lバッテリーを接続、何回か使用して問題なく溶接はできました。それから数ヶ月後に再度使ってみようと接続してみたら電源は入るものの溶接ペンを対象物に押し当ててもか弱くバチっ!といってシャットダウンするようになってしまいました。
バッテリーを自分で用意しなければならないこの安価なタイプは、接続するバッテリーの容量や出力によって溶接の具合が変化することもあるようで、溶接機単体では安価であるものの、接続するバッテリーが適切でないと使い勝手の面や動作の信頼性に問題があるように思えました。
そんな理由もあって今回は(充電器以外の)全てがワンパッケージになったものを購入することにしてみたんですが、結果から言うとこれは(今の所)正解でした。
(もちろん耐久性の問題や前に購入したものと同様にすぐ故障するようでは意味がありません)
実際に使ってみて、スポット溶接をするたびにあの重い軽自動車のバッテリーを(充電して)作業場所まで持ってきて、という事前準備のプロセスを経なくて良いのはとても大きなメリットと感じました。
参考のために視聴した動画投稿サイトにはリチウムイオンバッテリーの組電池を作る際に直接半田付けをする様子が見られましたが、熱を加えると発火・破裂等の危険があるそうですからそれは避けたいところ。
安全性と取り回しの良さがこのタイプを購入する上での重要なポイントで、それを価格と天秤にかけてどの方法を選択するのか?そこは人それぞれ。
6,000円前後という価格は素人が趣味で組電池を作る上でのコストとしては決して安いものではなく、たまにしか使わない機器なので「元を取る」なんてことを考えるべきではないでしょう。
充電不能になった電動工具のバッテリーを修理する目的で買いましたが、組電池を使用するにはBMSが必要だしそれも作ってみて使えるかどうかは未知数。
面倒なことが嫌いで信頼性を重視する人は素直にメーカー純正の交換用バッテリーを購入するか、本体ごと新品にしてしまうことをお勧めしますね。
結果的に割高な費用がかかったとしても、素人が趣味のDIYで知的好奇心を満たすのが目的であると割り切れるならお勧めの商品です。
個人的には「ポータブルスポット溶接機」を買ってよかったです。
今後は以前レストアしたマキタの電池ドライバードリル6095Dやインパクトドライバー6903VD、コードレスクリーナー4093Dの充電できなくなったニッカドバッテリーをリチウムイオン化するのに使ってみようと思います。
※追記 バッテリーパックのLi-ion化改造
上に挙げた電動工具等の充電不能になったニッカドバッテリーパックをリチウムイオン電池と置き換える改造をしました。
ジャンクのノートPCバッテリーパックから取り出した18650リチウムイオン電池の4.2Vの生セル三本を直列で組んでニッカド9.6Vからリチウムイオン12.6Vとしました。
充放電制御に市販のBMS(バッテリー マネジメント システム)基板を使用。
詳しくは以下のリンクから。
コメント